長崎の街をさるけば

 長崎では、あちこち、うろつき回ることを「さるく」と言う。別の方言に言いかえれば、さしたる目的もなく「ほっつき歩く」こと。「さるく」は長崎のみならず、佐賀、福岡、熊本の四県にまたがる有明海沿岸一帯でも使われているようである。

 どこをさるいても、パチンコ店が多いのは全国共通のようだが、他ではあまり見られず長崎に多い特徴的なものと言えば、カステラ店、中華料理店、黄檗宗の寺、坂道、石橋、教会などだろうか。しかし、それらより遥かに多いものが長崎には存在する。

 長崎を10mもさるけば、確実に目にする、あるもののなかに隠れているので、発見がなかなか難しく、長崎でも一般には、その存在はほとんど知られていない。

 安政年間に、函館、横浜、新潟、神戸と並んで開港された五港の一つが長崎港であることから、長崎市の市章として五芒星が採用されているため、長崎をさるくと、あちこちに図1のような五芒星の描かれたマンホールが見られる。

図1 五芒星のマンホール

 長方形のなかで、一番美しいとされる長方形の縦横の長さの比が黄金比だが、長崎市のマンホールに描かれている五芒星に黄金比がたくさん隠れている。

図2 正五角形の頂点を結べば

 図2のように、正五角形の頂点をつないだ図形から、最初の正五角形の五つの辺を消し去ると、☆印の図形ができ、五つの光芒が出ている星、それが五芒星と呼ばれる図形であり、さらにそのなかの、図3のような二等辺三角形に注目すると黄金比が見えてこよう。

図3 頂角が36°の二等辺三角形

 その二等辺三角形ABCは頂角が36°で、底辺と側辺の長さの比が黄金比になっている。頂角Aが36°だから、両底角BとCは72°であり、頂角の二倍だから、角Bの二等分線と辺ACの交点をDとすると、⊿BCDも頂角が36°の二等辺三角形になる。さらに⊿DABは両底角が36°の二等辺三角形となる。⊿ABCと⊿BCDは相似形になるので次の式が成り立つ。
AB:BC=BC:CD
AB=AC=[math]{ x }[/math]、BCの長さを1とすれば、CD=AC-AD=[math]{ x }[/math]-1だから、

となり、これから二次方程式

が導かれ、方程式の二つの解のうち、正の解を選べば

となる。これは黄金比に等しくなり、[math]{ x }[/math]=1.618・・・・・となる無理数である。黄金比については、さらに「黄金分割とフィボナッチ数列」を参照。

 長崎に一番多いのは坂でも石橋でもなく、黄金比ということになるが、話はこれだけで終わらないところが長崎である。長崎の中心街、浜の街のアーケードの一箇所にだけ、図4のような六芒星のマンホールがある。当然、この図形に黄金比は存在しない。

 長崎の観光ガイドマップ、「長崎さるく」には、その場所を長崎で唯一、六芒星のマンホールが存在するミステリーゾーンとして紹介されている。どうして、このマンホールにだけ、ダビテの星とも呼ばれる、ユダヤ教を象徴する六芒星が描かれているのか、それについては諸説あり、本当のことはよく分かっていないとのことである。もしかしたら、黄金の在処を示した暗号だろうか。

図4 六芒星のマンホール

 単に市章のデザインの光芒の数を間違えただけで、そこをいくら掘り起こしても、黄金も財宝も出てこないと思うが、さすが観光都市長崎、転んでもタダでは起きぬその根性、見上げたものでである。

  長崎の 街をさるけば 間違いも
  名所の一つに 繰り入れられて

 ここで、正五角形に関する数学の問題を一つ。次の図の正五角形FGHIJおよび三角形AIHの面積は、それぞれ、正五角形ABCDEの面積の何倍か。(T大大学院修士課程入試問題より)

 なに難しい? 黄金比の街、長崎に生まれ育ったのなら、この程度の問題、簡単に解かんば! ジュニア・ドクター塾(長崎大学のプロジェクト)に参加している生徒に解かせている。

ヒント:黄金比を[math]x[/math]とすると、正五角形ABCDE=[math]{ x }^{ 4 }[/math]×正五角形FGHIJ、 [math]{ x }^{ 4 }=\left( { x }^{ 2 }-x-1 \right) \left( { x }^{ 2 }+x+2 \right) +3x+2=3x+2[/math] など。

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