今年も、早1ヶ月が過ぎようとしていますが、旧歴では、まだ年は明けていません。旧暦の1月1日、つまり旧暦での正月は、通常、新暦の正月から1ヶ月以上遅れます。今年、2014年の場合、いつもより早く1月31日です。そして旧暦の正月は、長崎では、ランタンまつりの初日でもあります。
現在では、正月を旧歴で祝う家庭はまずないと思いますが、昭和20年代、農家は旧歴で新年を迎えていました。一般家庭では、当時から新暦だったので、どうして、我が家だけ正月が1ヶ月以上も遅れてやってくるのだろうか。どうして我が家の正月は、学校が休みにならないのかと不思議に思ったものです。
当時、農家が旧歴で正月を迎えていたのは、新暦の正月には、まだ麦蒔きが終わらなかったからです。秋の取り入れが終わり、木枯らしの吹くなか、かじかんだ手で鍬を持ち、霜柱の立った土を耕し、麦を蒔くための畝を作る作業は、梅雨時の田植えとともに、農家にとってはつらい作業でした。
その後、農機具の普及で、麦蒔きも早く終わるようになって、農家も、昭和30年代になると新暦で正月を迎えることができるようになったと記憶しています。
「新春のお喜び申し上げます。」という挨拶文は、新暦の正月だと、少々早すぎる感がありますが、旧暦の正月なら、例年は2月10日頃ですので、植物にとっては、既に春のはじまりです。確かにこの時期は雪の日が多く、年間を通して一番寒く、昔なら、最も火鉢が恋しい頃ですが、光合成で生きている植物たちは既に日照時間が延びていることを知っているのでしょう。庭木は新芽を吹き、寒さ厳しい中にも春の息吹が感じられる時期でもあります。
新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事
そんな時期と重なる正月を寿いて、万葉集編者の一人である大伴家持が詠んだ万葉集最後の和歌です。正月に、雪が降り積もるのは、めでたいこととされていたそうです。最近は、地球温暖化のせいか、新暦でも旧暦でも、長崎で正月に雪が降り積もることは、ほとんどありませんが、正月に雪が降っても、降らなくても、格差社会の今日、我々庶民の上にも、今年、吉事(よごと)が、あまねく降り注ぐことを願いたいものです。
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