x軸上に人が並んで立っていて、一番端(原点)の人が、万歳を繰り返し、それを見た隣の人も真似して同じく万歳を繰り返し、また次の人もと、次々に真似をすると、人の列を万歳の波が伝わっていく。これは球場やサッカー場のスタンドで見られる「ウェーブ」と同じであるが、ウェーブもスタンドを人が移動しているのではない。一般の波も含めて、波の伝搬とは、媒質が波の伝搬方向に動いているのではなく、媒質の運動の形態が伝わっているのである。
原点の人が、長さAの腕を上げ下げして万歳を繰り返したとしよう。このとき、肩の位置を中心として、腕の先端の位置がAsinωtのように変化したとしよう。ωは角振動数と呼ばれる。ここで、時間をずらし、t→t+2π/ωとすると、Asinω(t+2π/ω)=Asin(ωt+2π)=Asinωtとなる。つまり、原点の人は時間間隔2π/ωで同じ運動を繰り返していることになる。これから、人が腕を上下させる動作の周期は2π/ωである。また、振動数とは単位時間内に繰り返す回数であるから周期の逆数になり、この場合はω/2πとなる。
人の動作を真似るとき、背格好が同じであれば、正確に真似ることができても、その動作は少し遅れる。原点から距離xにいる人の動作は原点の人の動作に比べ、距離xに比例して遅れると考えられる。その遅れをkxとすれば、x点にいる人の、時刻tにおける腕の先端の高さy(x)は、
y(x)=Asin(ωt-kx) (1)
と表される。
次に、(1)式において、x→x+2π/k とすると、y(x+2π/k)=y(x)となる。つまり、2π/kだけ離れている二人は、まったく、同じ動作をしていることになる。これから波の波長λは2π/kとなる。
さらに、(1)式から、波の山や谷などは
ωt-kx=const. (2)
を満たしながら、x軸上を進行していく。(2)式を時間tで微分すると、dx/dt=ω/kとなり、これは波の位相速度となる。
以上を整理すると、波動が(1)式で与えられたとき、Aを波動の振幅、ωを角振動数、kを波数と呼び、その周期T、振動数f、波長λ、位相速度cはそれぞれ次のように表される。
T=2π/ω
f=1/T=ω/2π
λ=2π/k
c=ω/k
上記の波に関する基本的な四つの式は、教える側は、当然のこととして、さっさと教えてしまいがちだが、筆者のこれまでの経験からすれば、生徒側はあまりよく理解していなくて、多くは暗記しているだけのようである。
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