ノミのスカイダイビング

 高いところから物体が落ちるとき、空気抵抗は速度が増すにつれて大きくなり、やがて物体の重力と釣り合うと、それ以降は等速度で落下し、速度はそれ以上大きくはならない。そのときの速度を、ターミナルベロシティ、終端速度と呼ぶ。

 空気抵抗が物体の断面積と落下速度の積に比例するとすれば、終端速度に達したのちは、断面積と速度の積が物体の質量と重力の加速度の積に比例する。重力の加速度は一定であるから、終端速度は、物体の質量に比例し、断面積に反比例することになる。質量は長さのスケールの3乗に比例し、断面積はスケールの2乗に比例するので、落下する物体の形状と密度が同じなら、終端速度は長さのスケールに比例することになる。

 大粒の雨が当たると痛いときがあるが、そのときの衝撃は力積、つまり、雨粒の運動量に等しく、その運動量は質量と速度の積であるから、一個の雨滴が当たったとき、人が受ける衝撃は雨粒の径の4乗に比例して大きくなるからである。

 スカイダイビングの場合、その終端速度は新幹線なみの時速200km以上に達するという。ノミの心臓の持ち主には向かない競技だが、心臓だけでなく、体もノミ程度に、1000分の1の長さになれば、終端速度も1000分の1程度に遅くなり、そのまま着地して安全だから、パラシュートなしでスカイダイビングを楽しめることになるだろう。

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