アリとマスオさん

 一説では、アリは、最大、自分の体重の20倍の重さを運ぶことができるという。そうだとすれば、アリは6本の足で、アリ自身の体重も含めると体重の21倍の重量を支えることができることになる。カネもなければチカラもない筆者からみれば、大変な力持ちということになるが、アリの体の材質はそのままで、その大きさが相似的に人間ほどの大きさに進化したとしたら、それでも巨大アリの足は自分の体重の21倍の重さに耐えることができるだろうか。

 体の密度は変わらずに、アリの体長が1000倍になれば、その質量は10003倍となり、地球の大きさは変えないとすると重力加速度の大きさは変わらないので、体重も10003倍となる。巨大化するまえと同じく、アリの足が自分の体重の21倍の重さを支えることができるためには、アリの足の力も10003倍にならなければならない。

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 蟻の足の強度を考える前に、例えば吊り橋のロープの強度について考えてみよう。吊り橋のロープは、沢山の小ロープを束ねて作られているので、その強度は、束ねた小ロープの本数、つまり、ケーブルの断面積に比例する。それならアリの足の力もその断面積に比例すると考えるのが妥当であろう。

 1000倍に巨大化したアリの足の断面積は10002倍にしかならないので、支えることのできる力も10002倍にしかならない。これは巨大化したアリが体重の21倍を支えるのに必要な力の1000分の1でしかない。つまり、巨大化したアリの足は、自分の体重の1000分の21、つまり、体重の50分の1程度の重さしか支えることができなくなる。これでは蟻は荷物を運ぶどころか、自分の体重を支えることができず歩くことさえできない。

 体重の何倍ものの重い荷物を巣に運ぶアリは確かに力持ちだが、見方を変え、スケーリング則を通して比べるなら、サザエさんに頼まれ、勤め帰りのスーパーで、大根一本買って家路を急ぐ草食系亭主のマスオさ んのほうが、アリよりもはるかに力持ちなのである。(写真は大鳴門橋記念館に展示されているケーブルの断面)

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