カメの目覚め

 不覚にも、途中、居眠りし、カメとの競争に敗れたイソップ物語のウサギはあまりにも度が過ぎたようだが、少々居眠りしたぐらいで、ウサギがカメに負けるとは考え難い。しかし、居眠りしたのが、ウサギではなく、カメのほうだったとしたら、結果は明白であろう。我々、凡人は、物語のカメのように、日頃からこつこつと努力するほかないのだが、若いころは、往々にして凡人ほど慢心し、つい、ウサギの真似をしたがるものである。

 これまでの人生を振り返れば、筆者もまた、驕り眠り呆けていた愚かなカメではなかったのだろうか。長寿とされるめでたい生き物とは言え、今頃、やっと目覚めて、自分の本当の姿に気づいたところで、もともと歩みののろいカメのこと、遥か先を疾走するウサギに追いつけるはずなどないが、今が新たなスタート点、残りの人生を、カメらしく、急がず、しかし、一歩ずつ着実に、物理教育に精進したい。そして、物理にも、文学や芸術と同じく、ときめきと感動と癒しがあることを若い世代に伝えていきたい。

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