蜘蛛の糸

力学

仕事とりかえばや物語

1.はじめに  芥川龍之介の短編小説「蜘蛛の糸」の主人公カンダタが蜘蛛の糸を登るとき、カンダタの重心運動に仕事をしたのはカンダタの筋力か、それとも蜘蛛の糸の張力かで論争となり、双方譲らず、こう着状態が続いている。これを打開するには、力学の原...
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カンダタとヨーヨーと仕事の定義

仕事についての二種類の定義     定義A:仕事=物体に働く力×物体の(重心の)移動距離   定義B:仕事=物体に働く力×力の作用点の移動距離  辞書や教科書は、仕事の定義として、上記の2種類A、Bのうち、どちらかを仕事の定義としている。広...
力学

劇場型論戦「長崎の乱」

 混沌として先行き不透明な時代を象徴するかのように、異端の説?を唱える集団が日本物理学会を揺るがしているという。カンダタが蜘蛛の糸を登るとき、その重心運動に仕事をしたのはカンダタの筋力ではなく、蜘蛛の糸の張力だと主張する、いわゆる「張力派」...
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クーロン力で反発する2質点系

1.束縛力がない場合  質点AとBは、ともに質量がmで、どちらも帯電し正の電荷qを持ち、さらに、最初は、質点AとBとが長さ2y0の糸で結ばれているとする。AとBとはクーロン力で反発しあうので、糸には張力が働き、それはAB間の電気的反発力の大...
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自明性の罠

 先般来続けてきた、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を巡る力学論争(日本物理学会誌2016年9月号会員の声)を、一言で表せないものかと苦慮していたところ、奇しくも、今回の論争相手のなかのお一人、鈴木亨氏から、「自明性の罠」という言葉をご教示頂いた(...
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芥川文学「蜘蛛の糸」を巡る力学論争

1.はじめに  芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」で、蜘蛛の糸を登るのに仕事をしたのは、物語の主人公カンダタの筋力(筋力説)か、それとも蜘蛛の糸の張力(張力説)と考えるべきかが論争になった1,2,3)。まず、二つの説を紹介しておこう。 筋力説:カ...
力学

「蜘蛛の糸」を巡る力学対話

西の果ての某国立大学教養部の物理学教室の一室に、定刻になるとコーヒーの香りに誘われた人々が集まっていた。教養部廃止、大学の独法化と続いた一連の改革前の、古き良き時代の光景だが、ある日、そこで、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が茶飲み話の話題になっ...
蜘蛛の糸

芥川小説「蜘蛛の糸」のルーツ

 蜘蛛の糸の真相なるものをいくつか紹介したが、いずれも、知ったかぶりの憶測を、「蜘蛛の糸」の作者は嘆いているだろうか、それとも怒っているだろうか。急速な科学の進歩と目まぐるしい社会の変革のなかで、世の価値観が多様化した時代に、今なお、自己...
力学

疑惑その3:悪人正機説

 犍陀多なる男、自己中心の悪人には違いないが、物理教育にとっては、大変、利用価値のある男、蜘蛛の糸が切れても、何とか助ける手立てはないものだろうか。そんなことを考えていた矢先に、数人の学生から、おかしな目撃情報が舞い込んできた。  ...
蜘蛛の糸

疑惑その2:捏造説

 詭弁(きべん)を弄して人をたぶらかし、馬鹿げた話を、さも、まことしやかに吹聴する輩(やから)は、いつの世にも跡を絶たぬものだが、お釈迦様がプッツンしただの、キレタのと、根も葉もない下司の勘ぐりを、今度はどこの罰当たりが触れ回っているのだ...
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