T大学理学系大学院入試過去問より
ある時刻に直交座標系(x,y,z)の原点(0,0,0)を通過したボールが一定の速度で大気中のを落下するときの運動について考える。大気は平均的には無風であり、鉛直風は無いが、水平風には、平均値が0で統計的特性が高さによらず一様な揺らぎがあるとする。
一見、難しそうだが、この大学の問題は説明文が長いので、むしろ解りやすい。ここは諦めずに我慢のしどころ、続きを読もう。
このボールの中心が、hだけ落下して平面z=-h上の1点(x,y,-h)を通過する確率密度はこの平面上の点(0,0,-h)からの距離rのみに依存し、(Cは実定数)で与えられるという。このボールの運動に関連して以下の問いの答えよ。ただし、、また正の実数について、次の関係式①が成り立つことを利用してよい。
①
問1. 任意の正の整数nについて、
②
が成り立つことを証明せよ。
問1の解法: 数学的帰納法を用いる。①式をの関数とみなし、両辺をで微分すると、②のn=1の場合になる。あとは、n=kのとき、②が成り立つとすれば、n=k+1のときも成り立つことを示せばよい。尚、この問題では必要ないが、①式の証明はガウス関数の積分を参照のこと。
問2. 確率密度を平面z=-h全体に亘って面積分したものは1に等しいことに注意して に現れる定数Cの値を求めよ。
問2の解法: 確率密度をxとyで二重積分すると、①より、その値はCπとなり、それは1に等しいからC=1/π
問3. 平面z=-h上の点を通過したボールが、平面z=-2h上の点を通過する確率密度は、点を新たな原点と見なしたときにhだけ落下するボールの運動による確率密度と考えることができる。原点(0,0,0)を通過したボールの中心が、平面z=-2h上の1点を通過する確率密度を求めよ。
問3の解法:題意より、と表せる。よつて、
問4. 原点(0,0,0)を通過したボールの中心が、平面z=-nh上の1点(x,y,-nh)を通過する確率密度の表現を推定し、推定された表現が正しいことを数学的帰納法により証明せよ。
問4の解法: まで求めれば推定できよう。 これから、となり、 と推定できよう。あとは数学的帰納法で証明するのも簡単であろう。
問5. 原点(0,0,0)を通過したボールが平面z=-nh上を通過するとき、点(0,0,-nh)から距離rの点を通過すると、点数として点が獲得できると言うゲームをした場合、このゲームで得られる点数の期待値は何点になるかを求めよ。
問5の解法: パチンコやスマートボールを連想させる問題だが、題意を理解すれば、さほど難しくはないだろう。点数の期待値をNとすれば、問4の結果から、となる。極座標に変数変換すると、となるので、問1の公式②を使って計算できる。ただし、積分範囲に注意すること。
コメント