歳差運動と長期的な気候変動

 これは2013年12月25日に投稿した日没が一番早い日の続きです。
 地球の公転軌道が楕円であり、地球の自転軸が傾いていると、テニスボールが見えなくなる時刻を微妙に変えることになりますが、ただそれだけではありません。年末は新しいカレンダーが手に入る時期ですから、今年2013年のカレンダーと来年のカレンダーを見ながら、①今年の冬至から来年の春分までの日数、②春分から夏至までの日数、③夏至から秋分までの日数、④秋分から冬至までの日数を数えてみましよう。
 ①は南回帰線上にいる太陽が北上して赤道上に達するまでの日数、②は赤道からさらに北上して北回帰線に達するまでの日数、③は北回帰線から南下して赤道までの日数、④は赤道からさらに南下して南回帰線上に達するまでの日数です。
 世界地図を見ると、北回帰線、赤道、南回帰線が、等間隔に並んでいますので、①~④はどれもほぼ同じ日数になるように思えますが、それらの日数の間には少なからぬ違いがあり、結果は①89日、②92日、③94日、④90日となります。
 太陽が北半球にいる期間は②と③の和ですので、186日になりますが、それに対して、太陽が南半球にいる日数①+④は、これより1週間ほど短く、179日です。お天道様は南半球より北半球のほうがお好きなことが、カレンダーの日数を数えて分りますが、これも地球の公転軌道が完全な円ではなく、少し、楕円形であるからです。
 太陽が北半球にいるとき、北半球は主に夏の時期ですが、その期間が長くなるのは、地球が太陽から、少し遠くを公転するため、春分から夏至を経て秋分に至る地球の移動距離は長くなり、さらにその間の公転速度は遅くなるからです。逆に秋分から冬至を経て春分に至る過程では地球が太陽に近づくため、移動距離は短く公転速度は速くなり、その期間は短くなるのです。
 太陽暦は天球上での太陽の運行、つまり、見方を変えれば地球の運動を基準にしていますので、当然と言えば当然のことですが、日頃見るカレンダーのなかに、地球の公転軌道の形状が隠されていたのです。
 地球の公転軌道が楕円なので、太陽までの距離は季節によって変わることになりますが、地球が太陽に一番近づく日、つまり、軌道の近日点は、1月4日頃となります。また、一番遠ざかる遠日点はその半年後ですから、7月の上旬頃です。
 彗星の軌道ほどには極端ではありませんが、地球の公転軌道も僅かに楕円であり、地球は冬、太陽に近づき、夏は遠ざかっているのです。そのため、地球全体が受ける日射量は、太陽に近い日、近日点では、遠日点より、7%ほど増加することになります。地球は冬の方が夏よりも多くの太陽光を受けているのに、何故、冬はこんなに寒いのでしょうか。
 地球全体が太陽から受ける日射量は北半球と南半球に分配されます。春分と秋分では、南北に平等に配分されますが、地球の自転軸が傾いているため、冬至の近くでは南半球に多く分配され、北半球の分け前が少なくなり、近日点の近くを通るにも関わらず北半球は冬になります。一方、遠日点付近では、総日射量は少ないのですが、やはり自転軸の傾きのため、今度は北半球に多く分配されるので、北半球は夏になります。
 総日射量の多いとき冬になり、少ないときに夏になるのは、北半球にとっては都合の良いことですが、南半球ではその逆で、全体の日射量が多いときに夏が来て、少ないときに冬になることになります。でも、南半球は海が多いので、夏と冬の温度の差はいくらか、緩和されているのでしょう。
 もし、この関係が南北で逆転したら、北半球の夏は日射量が7パーセント増え、冬は7パーセント減ることになります。海洋に比べ陸地は熱しやすく冷めやすいので、陸地の多い北半球の気候は冬にはより寒く、夏はより熱いという、今よりずっと苛酷な環境になり、一方海の多い南半球は年間を通して温度差の少ない快適な環境になるかも知れません。そしてそのような南北の逆転は一万数千年後に起こると考えられます。
 最近では独楽で遊ぶ子どもなどいませんが、昔はよく遊んだものです。独楽が回っていれば、その軸が傾いても倒れることはありません。例えば、独楽の軸が右に傾いていても、次は向こう向きに傾き、そして左に傾き、手前に傾き、もとの右向きに戻るといった具合です。つまり回転軸の向きは変化しますが、傾き角の大きさは一定に保たれたままです。地球の自転軸は現在北極星の方を向いていますが、その向きも、長期的にみると、独楽の回転軸と同じように変化し、2万6千年後に再び北極星の方を向きます。
 このように、独楽や地球の運動を歳差運動と呼びますが、回転している物体に、回転軸の向きを変えようとする外部から力が働くと歳差運動が起こります。その力は独楽の場合は独楽を倒そうとする重力ですが、地球の場合は地球の形状が南北に少し押しつぶされた扁平な形状のため、他の惑星からの力は傾いている地球の自転軸を起こそうします。しかし、自転軸の傾きは変わらず、傾きの方向が周期的に変わる歳差運動が生じているのです。
 地球の自転軸の傾きは二万六千年の周期で変化していますので、一万三千年後には、地球の自転軸が現在と反対側に傾くことになります。そうなると、すでに述べたように、日射量の多い近日点では北半球がより多く照らされることになりますので、北半球の夏はより熱くなり、遠日点では南半球が照らされるので、北半球はより寒い冬になり、北半球は今より住みにくくなるかも知れません。
 年末ジャンボ宝くじで一攫千金を夢見ておられる皆様、当たれば、前後賞合わせて7億円、しかし、夢を見るなら、もっと大きな夢を見ませんか。気候変動の先を見越して、今から、オーストラリアの砂漠地帯でも買い占めておけば、一万年が過ぎた頃には砂漠が温暖な気候の緑地に変わり、土地が高騰して世界一の長者になれるかもしれません。
 

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