日没が一番早い日

夜間照明のないコートで、年中、ボールが見えなくなるまで、テニスをしていると、意外なことに気づきます。日没が一番早いのは冬至の日ではなく、冬至の20日程前になります。冬至の1週間ほど前になると、すでに少しずつ日暮れが遅くなっているのが実感できます。冬至は日の出から日没までの長さ、つまり、日中の長さが一年で一番短い日なのですから、日の出が一番遅くなるのも冬至ではなく、冬至を少し過ぎた辺りになります。
一年の間に日中の長さが変化するのは、地球の自転軸が公転面に垂直な方向から23.4度だけ傾いているためですが、南中から次の南中までの時間間隔も季節によって変化します。日の出が一番遅い日や日没の一番早い日が冬至と一致しないのは、冬至付近では、南中の時間間隔が長くなり、南中時刻が遅れるためです。その遅れは地球の公転軌道が完全な円でないことと、自転軸が傾いていることに起因しています。
太陽から地球を見たときの、地球の自転のみかけの角速度は自転の角速度から公転の角速度を差し引いたものとなります。自転の角速度が一定でも、公転の角速度が変わるので、太陽から見た地球の自転は、公転の角速度の大きい近日点付近では遅く見えることになります。これは、南中から南中までの時間間隔がきっちり24時間ではなく、近日点付近では、それより、長くなり、南中時刻が一日一日遅れていくことになります。
近日点は冬至の近くにありますので、南中時間の遅れによつて、日没が一番早い日は冬至の2週間程前になり、日の出が一番遅い日は冬至のあとにずれることになるのです。これだけでは分かりにくいので、下の図を見ながら説明しておきましょう。
冬至 南中時刻
南中の時間間隔が変わると、南中時刻を一定にはできませんが、敢えて、まず、南中時刻を一定にしてみましょう。つまり、左の図で冬至の日をx=0、南中時刻をy=0とし、日没時刻や日の出時刻を二次式で近似すると、日没時刻の変化は、y=x2+cと表わせ、日の出時刻は、y=-x2-cとなります。しかし、冬至近傍では、実際には南中時刻は遅れるので、右図のように南中時刻の変化を一次式で近似し、y=kxとすると、日没時刻も、日の出時刻も、yだけ遅れることになりますので、日没時刻はy=x2+kx+c、日の出時刻はy=-x2+kx-cとなります。これらの二次式の頂点は高校1年程度の数学で、それぞれx軸の負および正の方向にk/2だけずれることが分かります。しかし、昼間の長さ、つまり、y-yが一番短いのが冬至(x=0)であることには変わりありません。
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コメント

  1. ひろし より:

    南中時間の遅れによつて、日没が一番早い日は冬至より前になり、日の出が一番遅い日は冬至のあとにずれることになるのは理解できます。
    同じ理屈で行けば、遠日点は夏至の近くにあるので、図で、日の出時刻の曲線が下に凸、日没時刻の曲線が上に凸、南中時刻の直線は右下がりになり、南中時刻が一日一日早まることによつて、日没が一番遅い日は夏至より前になり、日の出が一番早い日は夏至のあとにずれるはずに思われます。
    実際には、日没が一番遅い日は夏至よりあと、日の出が一番早い日は夏至の前になっています。http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2014/hdni13142.html
    ご教示いただければ幸いです。

    • nobuyuki より:

      ひろし様
       的確なご指摘有難うございます。ただし、冬至のときほど急激な遅れではありませんが、南中時刻は、実際には夏至のときも、遅れていきます。これは自転軸の傾きのためです。次の「南中時刻の遅れ」でこのことを説明したいと思います。

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