ドアクローザー

CCI20130322_00000 玄関のドアを開けると、そのままにしていても、ドアはひとりでに閉まる。通常、玄関ドアには図のようなドアクローザーが取り付けてあり、その中にはバネと油による粘性抵抗が組み込まれている。
実際のドアクローザーの仕組みはもう少し複雑なようだが、ドアクローザーの模型として、バネと重りとダッシュポットからなる系を考えよう。
ダッシュポットはその粘性抵抗によって、重りに、その速さに比例した力を、重りの運動と逆向きに及ぼす。
重りの質量はドアの慣性モーメントに対応しているが、ダッシュポットの存在によって、重りの運動、つまりはドアの回転運動はどのようになるだろうか。
この模型の運動は、定数係数の線形同次二次微分方程式を解くことによって得られるが、ダッシュポットの粘性抵抗を変えていったとき、重りの運動がどのように変化するかについて考えてみよう。
CCI20130322_010000 ダッシュポットの粘性抵抗がゼロの場合には、おもりは上下に単振動をする。その場合の振動の周期は、おもりの質量の平方根に比例し、バネ定数の平方根に反比例する。
粘性抵抗がまだ小さいうちは、おもりは振動しながら、その振幅は減衰する。つまり、おもりの運動は減衰振動となる。ダッシュポットの粘性抵抗が大きくなるにつれ、振動の振幅の減衰が速くなるとともに、振動の周期は長くなる。
さらに粘性抵抗が大きくなり、ある一定値を超えると振動は起きず、バネの伸びは単調に減衰し、今度は粘性抵抗が大きくなるほど減衰は遅くなる。この運動状態を過減衰という。
初期条件として、おもりを引っ張りバネが伸びた状態から静かに手を離した場合、粘性抵抗を大きくしていくと、錘の運動の様子はどのように変化していくかを数式ソフトを用いて計算した。結果は図のように、減衰振動から過減衰へと移っていくが、その境目の運動を臨界制動という。
CCI20130322_0120000 図の(a)のような減衰振動をする状態に、ドアクローザーを設定すると、速く閉まるが、閉まる直前もドアは有限な速度を持つので、バタンと大きな音がするし、またドアで手を挟む危険もある。一方、加減衰の状態(c)であると、ドアがなかなか閉まらないので、屋内の冷暖房の効果が低下し、また、閉まるまでの間に、虫やのら猫が家のなかに入り込んでくる恐れがある。ドアクローザーは(b)の臨界制動の状態にセットすることにより、安全に、そして早く閉まるように工夫されている。

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