一刻の中の永遠

 光より速く走るものは何か。新幹線の「のぞみ号」という答を期待しているのではない。現在の物理学では、決して、答が存在しないとされるこの問に、敢えて答えるなら、それは人間の知的好奇心であろう。

 宇宙論が、それまでの天文学から分かれて誕生したのは、ほんの数十年前。量子力学の建設に始まる現代物理学が誕生したのが100年前。ガリレイ、ニュートンの近代科学の誕生から数えても300年余り。人類の起源まで遡ったところで、まだ300万年が経過したに過ぎない。

 いずれにしろ、今日までの僅かな時間の中で、人間の知的好奇心は、光の速さでも数十億年かかる宇宙の彼方にまでおよび、そこでの出来事を詳らかにしようとしている。 

 光速を遥かに凌ぐ勢いで進歩するのは宇宙論だけではない。量子エレクトロニクスや生命科学の分野でもまた然りである。個々の人間は瞬時のうちに消える水の泡のような存在ではあるが、広大な宇宙の一点に奇跡的に生じた知性は、真理を求め、世代を超えて受け継がれ、際限なく、知の領域を拡大し続けていくに違いない。


        一粒の砂に宇宙を見るには
        一輪の野の花に天上の楽園を見るには
        一握りの手の中に無限を掴め
        一刻の中に永遠を掴め
           ―ウィリアム・ブレイク「無垢の予兆」―
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イトカワの砂に宇宙を見る

011028

一輪の花に楽園を見る

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日本庭園のなかの宇宙

(桂離宮松琴亭庭園)

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