エクセルギー

 系と環境との温度差から仕事を取り出すとき、系の温度が環境より高い場合も低い場合も、その温度差が大きいほど、多くの仕事が取り出せる。しかし、仕事を取り出すことのできるのは温度差だけからだけではない。系と環境との圧力差からも仕事を取り出すことができる。
 一般に有限な系があるとき、その系が環境と熱平衡になるまでに、つまり、温度や圧力などの示強変数が環境と等しくなるまでに、その系から取り出しうる最大の仕事量をその系のエクセルギーという。
CCI20130603_00001 例として環境と熱平衡にない理想気体の系を考えよう。最初の状態Iにおける系の体積、圧力、温度、エントロピー、そして内部エネルギーを、それぞれ、V,p,T,S,U としよう。そして、最終状態F、つまり、系が環境と熱平衡になった状態における系の状態量をそれぞれ、V0,p0,T0,S0,U0 としよう。図のように、状態Iと状態Fを断熱変化と等温変化で結び、系が状態Iから断熱変化して、温度が環境温度T0と等しくなった状態をMとする。状態Mでの、系の体積と圧力の値をそれぞれ、VM,pMとしよう。状態Mでは、温度は、すでに環境の温度に等しくなっているので、その値はT0であり、断熱変化ではエントロピーは変化しないので、エントロピーは最初のI状態でのままであるからS,内部エネルギーは、温度のみの関数であるから、状態Mの段階ですでにU0 でなければならない。次に系をMからFまで、温度がT0で等温変化させる。
 I→M→Fの過程で、気体の系が外部にした仕事は図のなかで、図形IMFCAの面積に等しい。そのうち、四角形DFCAの面積に相当する仕事は系が環境にした仕事であるので、系が環境以外の外部にした仕事、つまり、エクセルギーは、図形IMFD(斜線部)の面積に等しくなる。つまり、エクレルギー=図形IABMの面積+図形MBCFの面積-長方形DACFの面積 である。右辺第1項、図形IABMの面積は、系が、断熱変化で外部にした仕事であるので、系の内部エネルギーの減少分 になり、第2項は等温変化で系が外部にした仕事であるから、環境から系に入ってきた熱量に等しいので、T0(S0-S) となる。第3項は明らかにp0(V0-V) であるから、エクセルギーEX
     EX=U-U0+T0(S0-S)-p0(V0-V)
と表される。(関連項目:ポッチャン便所からの熱力学

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