プラトンの正多面体

すべての面が同じ正多角形であり、一つの頂点を共有する面の数が、すべての頂点について等しい凸多面体を正多面体という。プラトンは、正多面体には5種類しか存在しないことを証明したので、その5種類の正多面体はプラトンの多面体あるいはプラトンの立体と呼ばれている。
正m角形の頂角がn個集まって多面体の一つの頂点を形成しているとしよう。mもnも3以上の整数でなければならない。さらに、正m角形の頂角の大きさのn倍は360°より小さくなければならない。例えば、mが3のとき、つまり、正多面体の面が正三角形のとき、その内角の大きさは60°であるから、1つの頂点に6個の角が集まると360°になり、頂点をなさない。よつて、その場合、nは5以下でなければならず、その値は3か4か5しかない。同様に、mが4の場合、正方形の内角は90°であるから、nの値は3のみである。また、mが5の場合、正五角形の内角の大きさは108°であるから、nは3のみとなる。
mは6以上になることはない。mを6にすると、正六角形の内角の大きさは120°であるから、これが三つ集まると、すでに360°となり、それでは多面体の頂点をなさないので、正多面体の面の形が正六角形になることも、それ以上の正多角形になることもない。結局、mとnの組(m,n)は次の5組しか存在しない。つまり、(3,3)、(3,4)、(3,5)、(4,3)、(5,3)の5組である。 次にこの五組はどのような正多面体に相当するかを考えてみよう。
一般の多面体について、その頂点の数をv、稜の数をe、面の数をfとすると、オイラーの多面体定理と呼ばれる
f+v=e+2          (1)
なる関係がある。オイラーの多面体定理については、我々の世代には懐かしいガモフ全集にその証明が明快に述べられている。再版されているので、一読されたい。(G.ガモフコレクション 「宇宙=1,2,3・・・無限大」白揚社 1992年 p.46)
その証明の概略を述べておこう。多面体がゴムのように伸縮自在な物質で出来ているとして、まず、多面体のある一つの面だけを切り取って、残りを平面上に押し広げてみよう。多面体について(1)式が成り立つなら、平面上に押し広げられた図形では、面の数が一つ減っているので、
f+v=e+1          (2′)
が成り立っていなければならない。平面上に押し広げられた図形には三角形だけでなく、多角形が混在しているが、対角線を引くことによって、三角形だけにしよう。対角線を1本引くと、eが一つ増え、fも一つ増えるが、vは変わらないので、(2′)式に変わりはない。平面の図形が三角形のみとなったら、辺を消す。このとき、eもfも一つ減るので、この場合も(2′)は成り立つ。
2辺と一つの頂点を消さなければならないときもあるが、その場合もvとfが一つずつ増え、eが二つ減るので、(1)式に影響しない。これを繰り返して消去していけば最後には一つの三角形のみが残り、明らかに(2′)は成り立つ。よつて、もとの立体では(1)が成り立たなければならない。
さて、オイラーの多面体定理を正多面体に適用してみよう。一つの稜を二つの正m角形の辺が共有しているので、
2e=mf           (2)
となる。また、一つの頂点からn本の稜線がでて、各稜線は2個の端点を持つので、
nv=2e           (3)
も成り立つ。(1)、(2)、(3)から、
f=4n/(2m-mn+2n)   (4)
となる。つまり、一つの(m,n)に対して、一つのfの値が決まる。fが決まれば、さらにv、eの値も決まる。
(3,3):f=4、 v=4、 e=6   正4面体
(3,4):f=8、 v=6、 e=12  正8面体
(3,5):f=20、v=12、 e=30  正20面体
(4,3):f=6, v=8、 e=12  正6面体
(5,3):f=12、v=20、 e=30  正12面体
上の表から、正8面体のmとnの値を入れ替えると、(3,4)から(4,3)になり、fの数とvの数も入れ替わり、正8面体から正6面体に代わることがわかる。同様なことは正12面体と正20面体の間でもおきる。これを双対性という。但し、正4面体ではmとnを入れ替えると、自分自身になる。互いに双対にある二つの正多面体は同じ対称性を持つ。

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