バネ付き振り子の描くリサージュ図形とブランコ

 本ブログで、先に公開した記事【「地に足のついた」力学教育のすすめ】において、壁や道路のように動かないものから受ける力のする仕事は、系全体の力学的エネルギーを増すことはできないが、系の異なる運動間のエネルギーの受け渡しには不可欠な仕事であることを述べた。同様なことはブランコでも生じていることを示すためにが、バネと重りでバネ付き振り子を作成して、振り子の振れる様子を撮影し動画にした。(左下の矢印で再生開始)

 バネ付き振り子のバネの質量はないものとすると、バネを吊るした糸が撓むことがない限り、重りに働く重力もバネの力も保存力であるから、バネ付き振り子は保存場のなかでの質点の自由運動になり、初期条件で決まる閉曲線を描く周期運動になると考えられる。

 重りの位置は、極座標で表すことができるが、バネ付き振り子の長さを適当に調整すると、重りは鉛直面内でr振動とθ振動による∞字型のリサージュ図形を描き、重りが、リサージュ図形に沿って動く向きの違いで、図1のような二つのリサージュ運動が存在する。

図1 二つのリサージュ運動

 リサージュ図形は閉曲線にはならず、1つの振り子でありながら、重りの運動は、連成振り子のようにふるまう。通常の連成振り子では、二つの振り子の間で、振り子を繋ぐ張力のする仕事によってエネルギーが交互に移動するが、バネ付き振り子では、リサージュ図形を描き、重りのr振動とθ振動の間でエネルギーが交互に移動する。

  動画のようき、α運動では、r振動が減衰し、θ振動が増幅し、β運動では、逆にθ振動が減衰し、r振動は増幅し、リサージュ図形の形が絶えず変化する。重りの運動エネルギーと、重力とバネによる位置エネルギーの和は保存しながら、α運動では、r振動からθ振動へエネルギーが移動し、β運動では、θ振動からr振動にエネルギーが移動している。バネ付き振り子は図2のような二重周期の長周期運動をしていることが分かる。

図2 バネ付き振り子の二重周期運動

 図2において、①→②→③→④ではα運動、逆の過程④→⑤→⑥→①ではβ運動をする。①ではθ振動の位相が反転し、④では、r振動の位相が反転する。振幅が0になった振動の位相が反転するのは、連成振り子の場合と同じである。バネ付き振り子では、張力はバネを通して重りに働き、バネはエネルギーを保存することができ、重りとの間でエネルギーのやり取りができ、図2の二重周期運動がひとりでに起こる。

 バネ付き振り子もバネがなければ、単振り子と同じだが、ブランコも、人がブランコの上で静止していれば単振り子だが、人がブランコの上で振れに合わせて屈伸運動をすれば、ブランコの重心をバネ付き振り子の重りと同じく、図3のように、α型のリサージュ運動をさせ、ブランコを振らせることも、β型のリサージュ運動でブランコを減衰させることもできる。

図3 ブランコの重心のα運動

 バネ付き振り子の重りが重力とバネの保存場の中での運動であるのに対し、ブランコは、内部に動力源が存在する振り子である。動力源である漕ぎ手が屈伸運動をしてr振動を生じさせ、ブランコの鎖の張力がr振動に負の仕事し、同時にθ振動に正の仕事をしている。

 バネ付き振り子は保存系であるからr振動からθ振動にエネルギーが移動するとr振動のエネルギーが減衰するが、ブランコでは屈伸運動によってr振動にエネルギーが供給されていれば、r振動が減衰することなくθ振動を増幅させることができる。そのためにはエネルギーを移動させるための張力の仕事が必要になる。

図4 車に働く水平抗力

 道路上を走る車も図4のように、動力源のエンジンが駆動輪の回転運動に仕事をし、道路から受ける進行方向の抗力Fが駆動輪の回転運動に負の仕事をして、車の並進運動に正の仕事をして車は走れる。ブランコの張力も屈伸運動のエネルギーをブランコの振れ運動に移動させるための仕事をすると考えれば、ブランコの運動も簡単に説明できる。エネルギーを創り出しているのは、車ではエンジンの仕事であり、ブランコでは人の足腰の筋力の仕事であり、抗力や張力が仕事をすると言っても抗力や張力がエネルギーを生み出しているのではない。

  

 

 

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