0. 枕草子の昭和的解釈
春は曙:ビルが建混み朝日は見えぬ 窓に西陽が当たるだけ…テレサ・テン
夏は夜:夜を待っても蛍はいない ネオンの川の灯りだけ…バーブ佐竹
秋は夕暮:枯葉散る夕暮れは来る日の寒さ(人生の黄昏)をものがたり…五輪真弓
冬はつとめて:早朝家を出ないと会社に遅れる 雪は降るバスは来ない…アダモ
季節は巡り、時代は移ろい、昭和も今では昔の明治。
1.地球の自転と公転
四季の移り変わりが存在する原因は、地球の自転軸が公転面に垂直ではなく23.4°傾いているためであるが、さらに、地球の公転も円軌道ではない。次の問いを念頭において、古くから日常生活で体験するいろいろな季節変化について考えてみよう。
問1. 年間で昼の長さが一番短い日は?
問2. 年間で夜の長さが一番短い日は?
問3. 年間で1日の長さが一番長い日は?
問4. 年間で日の出が一番遅い日は?
問5. 年間で日の入りが一番早い日は?
問6. 秋の日はなぜ釣瓶落とし?
問7. 太陽が北半球と南半球にいる日数はどちらが長い?
2. 天球図での太陽の位置
地上の観測点から見た太陽の位置の季節変化を示すのに、図1のような天球図が用いられる(大日本書籍「理科の世界3より)。図において、太陽までの距離には意味がなく、太陽の方向のみに意味がある。太陽はどの方向から昇りどの方向に沈むか、南中時の太陽の高度角や昼夜の長さはどう変わるかなど、太陽の方向の年間変化がこの図から分かる。
地球が完全な球であれば、北極星を見上げる仰角は、観測地点の緯度φに等しい。一方、南中時での太陽の仰角は、春分と秋分では、90°-φであり、夏至ではそれより、地球の自転軸の傾き角23.4°だけ大きくなり、冬至では、逆に23.4°だけ小さくなる。図から、昼間の長さが一番長くなるのは夏至(問1)であり、一番短くなるのは冬至(問2)であることが分かる。
太陽の南中時刻を測定すると、一日の長さもわずに変化している。その日の南中時から翌日の南中時までが一日の長さである。南中時刻は太陽観測から分かる。
図2は東京での南中時刻の観測結果であり、図3は、図2から求めた1日の長さの季節変化でである(国立天文台ホームページより)。図2のように南中時刻は一定でなく季節変化し、昨日と今日の南中時刻が同じであれば、一日の長さは丁度24時間である。昨日より今日が南中時刻が遅ければ、その分だけ1日の長さが24時間より長いことになる。図2の一日毎の差分が図3だから、図形の形としては図2を横軸で微分したのが図3である。よつて図2の極大点や極小点では、一日の長さは24時間丁度であり、図2の変曲点が図3では極大点や極小点になる。1日の長さの24時間からのずれはせいぜい30秒程度だが、図3を積分したのが図2であるから、南中時刻は30分近い幅で変化している。
一日の長さの季節変化を表す図3の曲線は夏至と冬至で極大であり、春分と秋分で極小となる。昼間の長さが一番短いのは冬至だが、1日の長さが一番長い日も冬至(問3)である。1日の長さは毎年、図3のような季節変化を繰り返すことになるが、図3の季節変化には、次の図4(図3を見て描いた概略図であり、横軸は左端が1月1日、右端が12月31日)のように半年周期の変化(赤)と1年周期の変化(緑)の和になっていることが分かる。
赤線で表されれる半年周期は地球の自転軸が傾いているためであり、青線で表される1年周期の変化は地球が楕円軌道を公転しているためである。南中時刻は複雑な季節変化するが、その差分をとり、さらにその変化を周期別に考えれば、その原因は自転軸が傾き公転軌道が楕円であるためである。
冬至は1日の長さが一番長く昼の長さが一番短い日であるが、日没が一番早い日は冬至より10日程前の日になり、冬至の日にはすでに日没は4分ほど遅くなっている。日の出が一番遅い日は冬至の後になる。日の出時刻と南中時刻の真ん中が南中時刻であるから、図5に示すように、冬至付近では南中時刻は遅れる。逆に言えば図2のように、冬至付近では南中時刻が急激に遅くなるために、日の入りが一番早い日(問5)は冬至に先行し、日の出が一番遅い日(問4)は冬至の後になるが、とどのつまりは、それも地球の自転と公転に起因している。
冬至は昼の長さが一番短く夜の長さは一番長く、一日の長さも一番長くなるが、日没が一番早い日や日の出が一番遅い日ではない。冬至の一週間ぐらい前から、日没の時刻が遅れることは、その時期に野外で仕事やスポーツをしていると気づく。
毎日、南中時での太陽の位置を天球図にプロットすると、天球上で天頂を通り南北を繋ぐ大円上(子午線上)に並ぶ点列になる。しかし、南中時刻は一定ではなく、図2のように年間で変化するので、ある一定の時刻、例えば、丁度正午での太陽の毎日の位置を天球上にプロットすると、図6のように、子午線上ではなく、季節により東西にずれるため、子午線のまわりに8の字形の点列を描く。これをアナレンマという。正午でのアナレンマは南北に真っ直ぐな8の字だが、午前や午後でのアナレンマは図6を南北軸の周りに回転したものとなる。つまり、午前や午後の時刻でのアナレンマは8の字の軸が傾く。アナレンマも地球の自転軸が傾き公転軌道が楕円であることに起因している。
3.カレンダーと世界地図と地球の運動
世界地図には赤道を挟んで、北緯23.4°と南緯23.4°に北回帰線と南回帰線とが描かれている。地球の自転軸の傾きのため、太陽は一年の間に、二つの回帰線で挟まれた領域を行き来しているように見える。春分から秋分までは北半球にいて、秋分から、翌年の春分までは南半球にいる。カレンダーを見ながら太陽が北半球にいる日数と南半球にいる日数を数えると、前者が1週間ほど長くなる。カレンダーも地球の公転軌道が楕円軌道であることを示している。
地球の公転軌道は完全な円ではなくわずかながら楕円である。太陽は楕円の二つある焦点の一つに位置している。地球が太陽に一番近づく位置、つまり、近日点は1月初めであり、冬至に近い位置である。一方、遠日点は夏至近くになる。春分から秋分までの途中、地球は遠日点を通過し、秋分から春分の途中は近日点を通過するため、前者の日数が後者より1週間程度長くなる。図7の黄色い部分の面積と緑の部分の面積がそれぞれ太陽がカレンダー上で北半球と南半球で過ごす日数に相当している(問7)。ただし図は軌道が楕円であることを強調して描いている。
4.秋の日は釣瓶落とし
すでに図5で示したように、南中時刻の変化のため、日の出や日の入りの時刻の極大や極小の日は夏至や冬至からわずかにずれるが、日の入りは夏至付近で一番遅く、冬至付近で一番早くなる。そして秋分付近が変曲点になるため、秋は、日毎に、日没時刻が急に早まる。しかし、秋の日の釣瓶落としにはもう一つの意味がある。
夏や冬は日没後もしばらくまだ少し明るいが、秋は日没後急に暗くなる。それを図1の天球図で説明するのは難しい。天球図は観測地点に固定された座標系から見た図であり、日没後の釣瓶落としを理解するには昼夜の境界線が見える座標系から地球の運動を見る必要がある。
図8は公転軌道面上で、地球と一緒に公転する座標系から見た地球である。その座標系から地球を見ると、地球は公転せず、自転軸が向きを変えながら自転しているように見える。図から明らかなように、夏至では観測地点は、地球の自転のため昼と夜の境界線を斜めに横切るのに対し、秋分では境界線を垂直に横切ることになる。
昼と夜の境界線は、光の散乱のため、一定の幅を持った薄暮帯が存在する。夏や冬では薄暮帯を斜めに通過するので、薄暮帯を横切るのに時間がかかり、秋分や春分では薄暮帯を垂直に短時間で横切るのですぐに暗くなる(問6)。薄暮帯の幅にも季節変化があるが、春も夜明けが日毎に早くなるだけでなく、日が出始めると急に明るくなる。そして、冬も日の出は遅くあまり変化しないが、明るくなるのにも時間がかかる。夜明けも夕暮れもその様子は季節によって異なる。
コメント