眼で見て考える電磁気学

 2020年のセンター試験の物理問題であるが、実際には目に見えない電気力線や磁力線を考えることによって、クーロン力や電流間の力を視覚的に理解することが可能になる。さらに、モーターや発電機の原理、また最近、youtubeなど話題になっているコイルトレインの仕組みなどについて力線を用いた説明を試みてみよう。

1. 電荷と電気力線

 真空中に電荷Qを持った正の点電荷が存在していると、図1のように、点電荷からQ本の電気力線が四方八方に出て、それは途中吸収されることなく無限遠まで伸びていると考えられる。電気力線の密度がその点の電界を強さを表し、矢印の向きが電界の向きである。

図1正電荷による磁力線

もし、電荷が、ーQの負電荷では、図2のように無限遠から出たQ本の電気力線が負電荷に吸い込まれると考えられ、磁力線の向きが図1と逆向きになる。

2 負電荷による電気力線

正と負の等量の電荷が互いに近くに存在するとき、正電荷から出た磁力線はすべて負電荷に吸い込まられ、電気力線の様子は次の図3のようになる。

図3 異符号電荷による電気力線

一方、どちらも正の電荷であれば、力線は吸収されず、二つの電荷から出た電気力線は無限遠に伸びていき、その様子は図4のようになると考えられる。負電荷同士であれば、力線の向きが逆になるだけであり、無限遠からでた力線が二つの電荷に吸い込まれる。

4 同符号電荷よる電気力線

電荷同士にはクーロン力が働き、異符号の二つの電荷には引力が働き、同符号の電荷には斥力が働くが、図3と図4の電気力線の図から、電気力線は縮もうとする性質があり、電気力線同士は反発する性質があると考えればクーロン力が視覚的に説明できる。

磁力線

 図6のように、磁力線は磁石のN極から出てS極に吸収さる。磁石の電極はつねにN極とS極とが一対として現れる。電気では、正の電荷も負の電荷も単独で現れることができるが、磁気ではN磁荷やS磁荷が単独で現れることはない。複数の磁石が存在するときは、異なる磁極は引力が働き、同じ磁極では斥力が働く。

図6 磁石が作る磁力線

電流も図7のように磁力線をつくることができる。

図7 電流がつくる磁力線

電流間に働く力

 直線電流を向こう向きに流すと、電流の回りに右回りの磁力線ができる。図8のように同方向の2本の電流を流すと2本の電流を囲むような磁力線になる。この場合、電流の間では二つの電流がつくる磁力線が逆向きになり打ち消しあい、磁力線密度は疎になる。

8 平行電流による磁力線

一方、、二つの電流を逆向きに流すと、図9のように電流と電流の間では磁力線が強め合う。

図9 反平行電流による磁力線

磁力線も電気力線と同じく、縮もうとする性質と磁力線どうしでは反発し合うという性質があると考えれば異なる磁極は引き合い、同じ磁極は反発し合うということが分かる。それと同時に図8のように平行電流は引き合い、図9のように反平行電流は反発し合うことが理解できよう。

さらに、コイルに電流を流した場合も磁力線の性質から、下の図10のように、コイルには上下方向に圧縮される力が働き、径方向に押し広げようとする力が働くことが分かる。

図10 コイルに働く応力

磁石と電流のつくる磁力線と左手の法則

 図11のように、磁石がつくる上向きの磁力線のなかに向こう向きの電流を入れると磁力線は電流の左側では密、右側では疎になり、電流は磁石から右向きの力を受け、磁石は電流から左向きの力を受けることが視覚的に理解できよう。これはフレミングの左手の法則でもある。

図11 磁石と電流のつくる磁力線

モーターのしくみ

図12にフレミングの左手の法則を用いると、回転子のABの部分には手前向き、CDの部分には向こう向きの力が働き、回転子が回転することが分かる。

12 モーターしくみ

発電機のしくみ

図13のように、上向きの磁界のなかで、導体を向こう向きに動かすと、導体のなかの正電荷(ホール)は向こう向きの電流をつくるため、フレミングの左手の法則により、右向きの力を受け、導体中を右方向に動く。一方、導体中の負の電荷(電子)は左方向に力を受ける。導体の両端を導線でつなぐと電流が導体のなかを右方向に流れる。電子の運動は電流と逆向きになる。

図13 発電機のしくみ

発電機もフレミングの左手の法則で説明できるが、左手を右手に変えて、人差し指は磁力線の向きで変わらないが、親指を導体を動かす方向にすれば、剛体中を流れる電流は右手の中指方向になる。

コイルトレイン

14 コイルトレイン

 図14のように両端にネオジウム磁石を付けた乾電池がコイルの中を走るコイルトレインの仕組みについて考えてみよう。

 まず、コイルが作る磁界のなかで、トレインの磁石はどのような力を受けるかを考えてみよう。もし、コイルが一様な磁界を作るとすれば、一様磁界のなかでは磁石は力を受けない。しかし、コイルには、トレインの長さの部分にしか電流は流れていない。コイルの中心部での磁界は一様だが、コイルの両端に近くでは磁力線は急激に広がるので、そこでは磁石はコイルのつくる磁力線から力を受ける。

図15 コイルがつくる磁力線のなかの磁石

例えば、図15の右側の磁石が受けるコイルの磁界は次の図のようになる。この場合、磁石は向きを変えることができなければ右向きの力が働く。

一方、左側の磁石も、次の図のように右向きの力を受け、トレインは、右方向にコイルのなかを走る。

 

コイルトレインもう一つの考え方

 次に見方を変えて、コイルを流れる電流が二つの磁石から受ける力を考えてによう。図16のように、磁石のN極から出た4本の磁力線について考えてみよう。磁力線は互いに反発し合いながら一旦、コイルの外に出て再びコイルの中に戻りS極に吸収される。A点でコイルの外に出るとき、磁力線は左手の法則に従いコイル電流に力を及ぼすが、B点でコイル内に戻るときは、そこではコイルに電流はながれていない。A点の電流は磁石から左向きの力を受ける。その結果、二つの磁石はコイル電流から反作用として右向きに力を受け、トレインは右向きに走る。

16 磁石の作る磁界の中を流れるコイル電流

 どちらの考えでも、トレインの動きに応じて、その長さに相当するコイルの部分にだけに電流が流れていることが重要である。磁気単極子は現実には存在しないが、もし、存在するとすれば、一様磁界のなかでも磁界から力を受けると考えられる。コイルトレインは、磁気単極子の運動に似ているが、コイル全体に電流を流して、一様磁界になると、トレインは動かない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました