質量の異なる球の衝突
哀愁列車のページでは、ガリレイ変換に対して、力学の法則が不変であることを用い、ビリヤードの球やカーリングのストーンのように、質量が等しい二つの物体の衝突について考えたが、今度は質量の異なる2球、例えば質量比が1:3の2球の衝突を考えてみよう。
まず、図1のように、同一直線上を、質量mの赤い球は右側から左に向かって速さ3vで運動し、一方、質量3mの緑の球は左側から右に向かって速さvで運動しているとしよう。運動量は質量と速さの積であるから、この場合、赤の球と緑の球の運動量の大きさは等しく、それらの向きは互いに逆向きであるので、二つの球からなる系の重心の位置は静止している。二つの球が衝突したあとも系の重心は静止していなければならないので、衝突が弾性衝突であれば、それぞれの球は衝突後、その運動の向きを変えるだけである。つまり、衝突後、赤い球は右向きに速さ3vで、青い球は左向きに速さvで運動する。
次に、この衝突現象を右向きに速さvで動きながら観測してみよう。観測者から見た球の速度は、静止系から見た球の速度から観測者の速度を差し引いた値となるから、観測者にとっては、衝突前の緑の球は静止していることになり、赤い球は左方向に速さ4vで運動していることになる。そして衝突後は二つの球は互いに逆向きに速さ2vで遠ざかる。つまり、静止して見れば図1のように見える現象を、右向きに速さvで動いて見れば、図2のように見える。
次に図2の現象を時間反転してみよう。つまり、図2の現象を動画に撮り、逆送りで再生すればよい。逆送りに再生され動画では、図3のように、互いに同じ速さ2vで近づいてきた2球が衝突し、その後、緑の球は静止し、赤い球は4vの速さで跳ねとばされる。図2と図3は互いに時間反転したものであるが、図3の現象は、図1の現象を、観測者が左方向にvで動きながら観測した現象でもある。いずれにしろ、図1、図2、図3は同じ現象を見方を変えただけに過ぎない。
振り子の衝突
それでは、図2と図3を上手に応用したおもちゃを考えてみよう。図4のように、長さが同じで質量比が1:3の赤い球と緑の球を重りにした振り子をつくり、重りを衝突させると何が起こるだろうか。
①のように、静止した緑の球の振り子に、赤い球の振り子を衝突させると、衝突後、②のように、互いに逆方向に同じ速さで遠ざかる。これは振り子の衝突の直前と直後に限れば、図2の衝突現象と同じである。やがて、赤と緑の球は、同時に最高点に届き、その後運動の向きが反転する。これは時間反転でもあるが、図3のように、赤い球と緑の球が同じ速さで衝突すると③、緑は静止し、赤い球のみが跳ねとばされる④。次に赤い球は最高点で向きを変え、再び①のように赤い球は静止した緑の球に衝突する。エネルギーの損失がなければ、これを繰り返す。カチカチ、カチカチと2拍子のリズムで繰り返す衝突球の音を聞いていたら、だんだん眠たくなってきたので今日はここまで。
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