南中時刻は太陽が真南に来る時刻のことですが、下の図のように南中時刻は季節によって変化します。
なぜ、南中時刻はこのような複雑な変化をするのでしょうか。以下に場合に分けて、順を追って説明しましょう。
1.地球の公転軌道が円で、かつ、地球の自転軸の傾きもない場合
地球の自転の角速度をΩ、地球の公転の角速度をωとしたとき、太陽から見た地球の見かけの自転の角速度Ω′は、Ω-ωとなります。
もし、Ωとωが等しいならΩ′=0となり、地球は自転していないように見えます。これを地球のまわりを公転する月の自転と公転の角速度に置き換えれば、地球から月を見たとき、月は自転していないように見えることと同じです。
地球の自転と公転の場合、Ωもωも一定であれば、みかけの自転の角速度Ω′も一定となり、南中からと次の南中までの時間、つまり、南中時間間隔は、いつも一日の長さ24時間に等しくなるので、この場合は南中時刻の季節変化は起こりません。
2.地球の公転軌道が楕円で、地球の自転軸が傾いていない場合
この場合には公転の角速度ωが季節によって変化することになります。ωは近日点(1月3~5日)近くで大きくなり、7月初めの遠日点近くでは小さくなります。そのため、自転の見かけの角速度Ω′=Ω-ωは近日点近傍では小さくなり、遠日点近傍では大きくなります。つまり、南中の時間間隔は近日点付近では、一日の長さ24時間より長くなり、遠日点近傍では24時間より短くなります。そのため、近日点近傍では、南中時刻が日に日に遅れていき、遠日点近傍では日に日に早まることになります。
しかし、上図のように実際の南中時刻の変化を見ると、近日点近傍でも遠日点近傍でも南中時間が遅れています。この矛盾を解決するには、さらに自転軸の傾きの効果を考えなければなりません。
3.地球の公転軌道が円で、自転軸が傾いている場合
自転軸が傾いていなければ、Ωとωの向きは一致しますが、今度の場合は両者の向きが、互いに角度φ(23.4°)だけ傾いているため、太陽の位置から地球を追いながら見ると、地球の中心は静止して、地球の自転は、公転面に垂直な軸の周りに1年周期の歳差運動をしているように見えるでしょう。
太陽の位置から宇宙の北を上にして地球を見ると、地球の自転軸の向きは冬至の時、手前に傾き、春分では左、夏至では向こう向き、秋分では右に傾いて見えます。
ここで、太陽と地球、両方の中心を結ぶ直線と地球の自転軸を含む平面を南中平面と呼ぶことにしましょう。南中平面は冬至と夏至では公転面に垂直ですから、太陽から見た地球の自転の角速度は、1の場合と同じく、Ω′=Ω-ωとなりますが、春分と秋分では、南中平面に対して公転面がφだけ傾いているので、Ω′=Ω-ωcosφとなります。
この場合には、太陽から見た地球の見かけの自転角速度は、冬至と夏至では小さくなるため、その近傍では南中時間が遅れることになります。一方、春分と秋分では見かけの自転の角速度が大きくなります。
自転軸の傾きの向きは26000年の周期の歳差運動のため、春分点が移動しますが、現在では、たまたま、近日点と冬至が接近しています。そのため、2の効果と3の効果を合わせると、12月~1月と6月~7月の両方で南中時間の遅れが起こることになります。前者は2と3の効果が合わさって、図のように南中時間の遅れが後者より著しくなります。
コメント
「太陽の位置から宇宙の北を上にして地球を見ると、地球の自転軸の向きは冬至の時、手前に傾き、春分では左、夏至では向こう向き、秋分では右に傾いて見えます。」という説明があります。軸が手前に傾くというのは私の感覚では、北極が見える方向に感じます。そうだとすると北半球では夏至だと思いました。「冬至の時、南極が見える傾き」のほうが分かりやすいです。
もう一つは説明を見ても理解できないことですが、自転軸の傾きだけの影響のグラフを見ると、春分・夏至・秋分・冬至の各点における均時差が0ということです。グラフのカーブの頂点にそれぞれの点があるというのが理解になってしまいます。
野口信二様
確かに南北を取り違えています。ご指摘有難うございました。